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【漢方薬のはなし】漢方薬は本当に慢性症状だけなのか?

漢方薬は慢性症状のみ?

 一般の方が抱く漢方薬のイメージにはいろいろなものがある。
 そのイメージの多くは間違ったものが多いのですが、そのなかのひとつが、「漢方薬は慢性的な症状にしか効かない」というものです。逆を返せば、「漢方薬に速効性はない」と言い換えてもいいでしょうか。

 しかしこのブログをお読みの方は、これを機会にこのイメージを訂正してほしいなと思います。

 例えば、とても強い肩こりなら1時間くらいで効いてくることを実感できますし、こむら返りや足のつりなどは5~10分くらいでやわらぐのを感じるはずです。また、カゼや発熱といったものも、最初のときにしっかりと処方をすれば沈静化は早く、しかも治り方もスッキリとした感じを味わえると思います。

 こんなことをお話しすると意外かと思われますが、漢方処方をしている現場としては、ふつうに目にすることですし、それを念頭に私たちは処方をしています。
 むしろ西洋医学の薬の方が慢性的なものにばかり利用されているように感じています。というのも、高血圧やコレステロールの薬など、一度飲み始めたら死ぬまで止められないわけですから、これは漢方薬の比ではありません。

漢方薬のはじまりは感染症への対策

 それでは、漢方薬の歴史を振り返ってみます。

 まず、漢方薬のはじまりは『傷寒論』という書物にあります。これは今から約2000年前に、張仲景という当時の医師によって書かれたものです。漢方薬の原典として、今でも活用されるもので、中国では、著者の張仲景は“医聖”と称されています。

 この『傷寒論』の全文には以下のようなことが書かれています。

「わが一族は、以前は二百余名の親族がいたが、この十年余りの間に三分の二が亡くなってしまった。このうち傷寒病で亡くなったのが七割も占めている」

 この文章に出ている“傷寒病と”は、インフルエンザや風邪、急性の胃腸炎などの細菌やウイルスによる急性熱性の感染症です。まだまだ人類にとって細菌やウイルスは脅威でしかなく、平均寿命は20~30歳であったと推定されています。

 このような症状の変化の激しい細菌やウイルスによって命を落とす時代において、求められているは“速効性”です。栄養状態が芳しくなく、今日よりもはるかに衣食住が乏しい時代、嘔吐や下痢が止まらないだけでも死に直結していたのですから、とにかく目の前の症状を改善する速効性が必要だったのです。

 そこで立ち上がった張仲景は、当時手に入る様々な動植物の生薬を試し、組み合わせ、そして体と病気の関係をつぶさに観察していき、それを『傷寒論』という一冊の本にまとめあがたわけです。

 長く飲み続けてじっくり効いていく・・・確かにこれも漢方薬の特徴の一つです。

 しかし、それだけが漢方薬の特徴ではありません。

 ウイルスや細菌といった急性期の病人に対しても、速効性をもって効果を上げるための試行錯誤を繰り返していったものが漢方薬のはじまりです。

 張仲景がどうして漢方薬をはじめたのか。
 その状況を知ると、“漢方薬には速効性がない”なんて誰が言えるでしょうか?

 生きるか死ぬかの命をかけた戦いが、漢方薬のはじまりなのです。

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