小青竜湯と衛益顆粒の違い
花粉症に効く漢方薬はありますか?
花粉さえなければ・・・
清少納言の『枕草子』冒頭にある名文章は、一度ならずと目にしたことがある人は多いかと思います。
春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
清少納言『枕草子』より
長く寒い冬が終わり、ようやくのどかで温かみのある春がやってきた・・・。そんな春のなごやかな空気感が伝わってくる文章です。
しかし、そんな穏やかな春のイメージはどこ吹く風、『枕草子』のように気持ちよく春を迎えることができたらいいのになぁと、心底思っている方も多いのではないでしょうか?
そうです・・・
あの花粉症さえなければ・・・。
抗アレルギー剤や漢方薬も
病院に行きますと、アレジオンやアレグラなど、抗ヒスタミン剤と呼ばれるお薬が処方されると思います。
そういった花粉症の薬を求める方の中には、小青竜湯という漢方薬を飲んでいる方も多いのではないでしょうか?
また、病院に行ったら西洋薬と一緒に小青竜湯も出されたという方もいるかと思います。
花粉症といえば、代表的な症状としてまずは“鼻水”。
そして“鼻水”といえば、漢方薬では“鼻水=小青竜湯”という公式のように、普通に処方されるものです。
しかし小青竜湯を服用している患者様の中で、どれだけの人がその効果を実感しているでしょうか?
そして、小青竜湯が一度処方されると、どれくらいの期間飲んでいますか?
正直なところ、どうでしょう?
この際、小青竜湯を処方するお医者さんの顔は思い浮かべるのはやめましょう。
正直なところどうでしょう?
自分の体のことですから、義理ではなく、本音でどうでしょう?
小青竜湯は、あなたの花粉症に来ていると思いますか?
薬戸金堂は小青竜湯よりも衛益顆粒が第一選択
薬戸金堂では、花粉症には小青竜湯よりも、衛益顆粒というものをおすすめしております。
衛益顆粒は、イスクラ産業が出している商品名で、古くから使われている名称は「玉屏風散」になります。
(ここではややこしくなり、一々表記していくと繁雑にもなりますので、衛益顆粒に統一してお話ししてまいります)
世の中では“花粉症=小青竜湯”という公式が成り立っているのに、どうして薬戸金堂は、花粉症一押しとして、衛益顆粒を選ぶのでしょうか?
決して小青竜湯が悪いわけではありませんが、でも、私たちはそれがとても最適解とは思えないのです。
これまであった“花粉症=鼻水=小青竜湯”という古い公式を、患者さん一人一人の体を診ることなく、ただ画一的に当てはめているようにしか思えないのです。
そこで、小青竜湯と衛益顆粒の違いについて述べていき、どうして衛益顆粒の方がおすすめなのか、そのあたりをお話ししてまいりたいと思います。
小青竜湯について
風邪のときの鼻水に
小青竜湯が効果を発揮するタイプは、「風寒客表」「水飲内停」というものなのですが、一つ目の「風寒客表」とは、“風寒、つまり風邪のような寒さや冷えが、身体の表面を攻撃している”という状態のこと。そして、二つ目の「水飲内停」とは、そもそも胃腸や肺の力が弱っていて、体の水分を調整する機能が弱っているところに加えて、そこに風寒が入って、しまいにはその水分が動きを失った水飲という状態になって停滞しているというもの。
少しややこしいですが、まとめてみると、小青竜湯が使用できる状態とは、以下のようになります。
- 風邪や寒さが体にはびこっている
- 胃腸が弱っている
- 水飲が体の中で停滞している
この三つの条件がどれも揃っている花粉症に対しては、小青竜湯は根本的な解消につながります。
しかし、単純に、“鼻水が出ている”というのだけでは、小青竜湯を使う条件としては不十分ということになります。
では、いま生じている花粉症はいかがでしょうか?
- 風邪のように寒いですか?
- 悪寒がしますか?
- 水飲は浮腫にも関係しますが、浮腫んでいますか?
もしこれらの症状が同時になければ、小青竜湯の効きは弱く、効いてもその場しのぎ、根本的な解決にはなりません。
強い作用のある生薬を含んだ小青竜湯
また、小青竜湯には、麻黄、細辛、半夏といった、わりと強い作用のある生薬が入っていますので、これを長く飲み続けることを良しとはしません。麻黄は体表面の力を振り絞るように使ってしまいますので、長期に渡って使っていると、冷えが進んでしまうこともあります。
花粉症といいますと、早い人で正月明けから、平均では2月に入る頃から花粉を感じるようになってきて、しっかりと終わるのはゴールデンウィークあたりということになりますので、3~4ヶ月は飲み続けることになると思います。これだけ長い期間、強い生薬が入っている小青竜湯を飲み続けるのは、違った意味でのリスクになります。
以上のような理由から、安易に小青竜湯を花粉症に使うことに対しては、われわれ薬戸金堂のスタッフは、多くの疑問を感じているのが正直なところです。
衛益顆粒について
鉄壁な守りでガードする
それでは、一方の衛益顆粒はいかがでしょうか?
衛益顆粒の一番の特徴は、“体のバリア機能を強化する”ことにあります。
東洋医学では、体の外側を守る気(エネルギー)のことを、衛気(えき)といいます。
衛益顆粒は、この衛気を益すので、衛益(えいえき)という名称が付けられました。
衛益顆粒の元になっている漢方薬の名前は、「玉屏風散」といいます。
“玉”とは、最高級なものの喩えで、屏風は風を避ける衝立(ついたて)のことです。
つまり、“玉屏風散”とは、“最高級クラスの屏風で体を守ります!”というはたらきを表現した名前なのです。
ここからも分かるように、衛益顆粒は、強力な守りをしてくれるというのが強調された漢方薬なのです。
黄耆の力で
衛益顆粒の主な成分は、黄耆(おうぎ)です。
黄耆は、補気といって、気を補う作用があります。
黄耆の気の補い方は、全体を支えて持ち上げるイメージです。
体のエネルギーをぐっと持ち上げて、耐える力をつけてあげる、そんなはたらきが黄耆にはあります。
花粉症は体の外から花粉がやってきますので、まず、第一に花粉が中に入ってこないように、外側のバリアを強くしてあげるのが得策です。
よって、外からやってくるものは花粉だけではなく、風邪などのウイルスもありますが、こういった外から入ってくるものすべてに対して、衛益顆粒はとても力強くはたらいてくれます。
黄耆は気のエネルギーを増やしてくれますので、単純にいえば、体力的な部分もやんわりと補充してくれます。
白朮で胃腸を元気に
衛益顆粒に含まれる生薬は三つですが、その内の一つが「白朮」と呼ばれるもの。
この白朮は、胃腸を元気にしてくれる生薬です。
胃腸は飲食物を消化し、吸収するとても大切なところ。
生誕後、万物は腸から吸収される栄養分で体と心を養っています。
よって、胃腸が元気で、食事がしっかりとしていることは健康の大きな要素になります。
この胃腸が元気でないと、いくら黄耆が気というエネルギーを補ってくれてもままなりません。
白朮が胃腸を保ってくれるからこそ、黄耆も実力を発揮してくれます。
まとめ
以上のように、小青竜湯と衛益顆粒の両者を比べてみると、その特徴が全く違うと言うことが分かると思います。
どちらがいいとか、どちらが悪いとかいう基準ではなく、あくまで患者様のからだがより小青竜湯よりなのか、衛益顆粒よりなのか、ということになります。
しかし、これまで花粉症の方を診ていますと、小青竜湯がぴったり合うという人は少ないのではないかというのが私たちの印象です。
風邪を引いたような花粉症というよりは、体を守るエネルギーが弱っている人の方が多いと思います。
衛益顆粒は、体の守りを強くしてくれるので、より体全体への作用が大きく、全体の底上げにつながります。
小青竜湯にはそういった作用がないので、あくまで鼻水への対処療法的なものとなります。
どちらがよりよいかは、プロの見立てが必要になりますので、漢方相談を受けて欲しいと思います。
しかし、この記事を参考にして、もらった漢方薬がどのような作用があるのか、果たしていま飲んでいる小青竜湯は効いているのか?、そういった自分の体を見つめる参考にしていただけたら幸いです。